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infected dream

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『太陽が生まれ変わる頃』

 そろそろ、おやすみの時間。1年ほど前から、僕の寝床は、スタジオの階段を上がった場所、天井がすぐ傍にあって、天窓から少し空が見える。昨日は月の明かりがベッドの隅を照らしていた。暖かい空気は上に上がるから、夏はとんでもなく暑いのだけれど、冬は暖かい。

 iPadに、Star walkという夜空をガイドしてくれるアプリがある。その中のギャラリーに星雲の中をどんどん進んで行く事が出来るビデオがある。ちょっと頭の回転を鈍くしてやれば、まるで、宇宙の中を一人浮遊しているように感じる。昨夜は、ふと、『ああ、人は死んだら宇宙のどこかに行くのかもしれない。』と、ありきたりではあるけれど思った。時間というのは複雑で、今、地球上で確認できる光は、何億光年の距離の星の光を見ているということだし、その何億年前の命の灯火、もしかするともう存在しない星の光が今ここに届いているという訳だ。それは、幻ではなく、確かにここに届く光で、つまり命のかけら。『人は死ぬと、お星様になる』などという少しこっぱづかしい、ロマンチックなフレーズがあるが、『命とは星の光のようなもの』という感覚がそういう言い回しを生んだのかもしれない。

 先に行ってしまった友人達のひとり、bice。彼女の不在の実感は、不思議なことに時が経つほどに大きくなって来る。作品を聞けば、そこに、また彼女の命が再現される。何億光年も離れたところにいようとも、目の前に彼女の命が蘇る。悲しみだけではなく、そこに慈しみという言葉がふさわしいかのようなものを感じる。

 彼女の最後のアルバム『かなえられない恋のために』がiTunesで発売されていた。
https://itunes.apple.com/jp/album/kanaerarenai-liannotameni/id285242812
僕は、8曲目『太陽が生まれ変わる頃』でギターを弾いている。レコーディングの日に、僕のスタジオに来ると言ってたけれど、『忙しくて行けないからやっといて』という信頼されているのか、なんなのかわからないメッセージとデータを受け取る。ギターを弾いて送り返した。久々に、一緒に作品を創るということで、楽しみにしていた僕は、少々へそを曲げる。

 その後、出来上がったCDが送られて来た。作品を一通り聞きながら、クレジットみたところ、名前が間違っていた。ああ。レコーディング時に少しへそを曲げていた僕は、冷たい口調で、「名前間違えてるんだけど?」てな具合で、電話を。きっと彼女は、そんな僕の声にビビったのだろう。「わ、私じゃないもん!私、ちゃんと伝えたもん」と返事。今から、考えると、子供っぽくて可愛い。(笑)『ごめーん』という言葉を期待して、それだけで何事もなかったことに、次の話題へと移す事を予定していた僕は、逆にさらにへそを2回転くらい曲げられてしまって、確か、一言二言話したあと電話を切ってしまった。それが彼女との最後の会話。

 僕は、彼女のことを、女性の中で唯一、一生ミュージシャンとして関わって行くだろうなと思ってた人だった。きっと、お互いに爺さん、婆さんになっても、しょうがねーなー、とか言いながら時々、一緒に音楽をやっている仲だと思っていた。そのくらいのことなどは、またそのうち何事もなかったように、にんまりとしながら音を出す事で未来を創っていくと信じていた。

 最後の会話が、あんなだったことは後悔していない。また、会わなきゃ行けない理由になった。そして、『この太陽が、生まれ変わる頃、偶然会えたら..』という彼女は歌う。

 

 
by kkkr | 2013-01-30 01:27 | 日常の中の特別
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