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infected dream

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その空間のためだけの音楽

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Takram監修で作られた、TOSHIBA水素エネルギーシステムのショールームHydrogen Energy R&D Center、での音楽を担当いたしました。(残念ながら一般公開はされていないのですが。)

日本中に、世界中の人に聞いてもらいたいと願いながら発表する音楽もあれば、その場所、空間、そこに来る人のためだけの音楽も。音楽は主体ではないけれども、その空間の景色や時間の流れさえ変えることができる。エゴを出来るだけ押さえつつも、ただのBGMにならぬように、自分らしい音を選びその空間に来る人のために創る音楽。プレッシャーを感じながらも、うまく行った時には、その場に魔法をかけた魔法使いになったような気分になれるのです。

今、国内外、期間限定のものもあれば、常設のもの、場所や、乗り物など、公開されるもの、閉じた空間のもの、公言できないものも含めて、少しづつ増えて行くことに、ほくそ笑み、喜びを感じています。映画音楽が好きだった小学生時代、今、景色に空間に音楽を創っている自分、変らないのかもね。

そして、今、東京大学で『はじめての真空展』が。
良く響く、トンネルのような回廊を持った空間。その場所の特徴を活かせるように、設備を整え、作曲しました。真空?難しそう...という人にも、楽しめる展示、空間です。そして、校内の風景も素敵だったり、学内のレストランのリゾットが美味しかったり(笑)。1期はもうすぐ終わってしまいますが、是非。







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# by kkkr | 2016-06-11 02:20 | 音楽

真空のための音楽

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photo by Kaz Yoneda

 『はじめての真空展』
この展覧会への音楽制作依頼を受けた時に、まず考えたこと。「真空にはどんな音が似合うのか...。ん?真空では音が伝わらないじゃないか…。」から始まった真空への音楽制作。

 真空について調べてみた。
『絶対真空とは空間中に分子が1つもないこと。人工的に作ることのできる真空状態では、1立方センチメートル中に数千個の気体分子が存在する。外宇宙と呼ばれる銀河と銀河の間にも、気体分子が存在すると言われている。』とのこと。よかった、そこに音が存在する可能性は、0ではなかった。つまり、真空展に音楽を作ることの矛盾はかろうじて避けることが出来た。

 現場は、昔、風洞実験に使われたという逆U字型のトンネルのような空間と長方形のフロアが繋がっている。U字のトンネルの入り口は、丸いデザインで、映画に出て来る宇宙ステーションのような感じ。音響設備を持ち込んで音の流れを実際に出してみた。予想通りかなり長い残響が残る。U字トンネルの方に1つ、長方形の方の空間の両隅にひとつづつ。合計3つのスピーカーを置く事にした。その昔、風洞実験で、風が通ったように、音が流れて、通り抜けるように。

 さて、どんな音楽を創ろうか。”実”と”虚”。普段音楽を創る時は、ひとつづつ音を重ねて、”実”=”音”の方だけに意識を置いている。今回は、”虚”=”音のない瞬間”にも、同等に意識を向けてみよう。水墨画のように残された”虚”部分が、大切になる音楽を創りたいと思った。

 スタジオで、前に2つ、後ろに1つのスピーカーを配し、実験?(作曲)をした。結果、4つのコンセプトが出来て、25分ほどの組曲(と読んでいる)が出来上がった。3つのスピーカーから同時に同じ音が鳴る瞬間はない。3つの音の直接音を同時に聞くことの出来るスウィートスポットはトンネルの入り口付近の1カ所。そこで、聞くと、3方向からの音が飛び交い、非日常な心地良さ(と望みますが)を味わう事が出来る。また、そこから離れてることで、聞こえて来ない音、遠くの遅れて聞こえて来る音、特別な音楽が生まれる。25分ほどの組曲、その場所にいる時に、ある曲のある部分が流れる瞬間は無二に等しい。場所と時間(音)が重なることで、それぞれの特別な瞬間が生まれる。

 ピアノ、チェロ、とプログラミング。出来た音楽の全体像は、このところの僕の音楽とさほど変らない。しかし、真空、虚、ガラスに閉じ込められた空(くう)、宇宙の星と星の間になにもないとされている宙(そら)、そんな捉えどころの無いものへ思いを馳せて創った音楽は、両面白のリバーシブルのシャツを裏替えすほど、見た目は、大して変りはしないけれど、自分では、全然違うものになったような気がする。

 身近にある真空から、最先端で、使われる真空状態、宇宙、そんな事を垣間みれる展覧会。音楽は、伏線のひとつだけれど、そんなことを考えながら生まれたあの場所、ある期間だけの音楽も、意識して貰えたら(or 無意識で感じて貰えたら) 幸いです。

Thanks for Kaz Yoneda and Mai Tsunoo
2015年6月1日 松井敬治

『はじめての真空展』http://www.hayashi-fund.iis.u-tokyo.ac.jp/exhibition/events.php














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# by kkkr | 2016-06-01 18:29 | 音楽

安曇野絵本館

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90年だったかな、大阪の緑地公園駅にある天牛書店というお気に入りの古本屋で見つけた、東山魁夷『コンコルド広場の椅子』という本に魅せられ、長野の東山魁夷美術館へ絵を見に行きたいと思った。『コンコルド広場の椅子』は東山魁夷氏が、パリにいたときに水彩で描いた絵本のようなもの。その空間と、まぶしいような色彩。パリにも行ってみたいと思ったし、もっと東山魁夷氏の絵を見てみたいと思った。その初冬、レコード会社と契約し、しばらく自由な時間とれないかもしれないと短い旅に出た。

 長野市に行く途中、安曇野で一泊し辺りを散策した。旅のしおりに書かれた場所を何カ所か巡ってそれなりに楽しんだ後、車で林の中の道を進むと、安曇野絵本館という書かれた小さな木製の看板を見つけた。その案内に導かれて行った森の中に立つ絵本館。子供のものである絵本を大人にも開放したいとオーナーが自力でたてた絵本館でした。その時、ちょうど、ポーランドの作家、スタシス・エイドリゲヴィチウスの原画展が開かれ、その絵にとても惹かれ、そこから生まれた音もその後のレコーディングに影響したほど。展覧会の最後には、お茶が振る舞われ、きらきらと目を輝かせて微笑むオーナーと何時間も話し込んでしまった。

 音楽で生きて行く上で、あの場所は、ある意味原点のような場所で、ことあるごとにそこを訪れては、初心を思い起こしたり、新たに経験したものを整理する時期に訪れたくなる大切な場所だった。今回の絵本とそのサウンドトラックという作品は、ある意味、どこかで、あの場所へ再び辿り着きたいとどこかで思っていたように思う。

 先日、絵本館のオーナーに、今回の作品『Flight』をお送りし見てもらった。そして、置いて頂けることに。が、7月6日を最後に絵本館を閉じるとの報告を受けた。実は、前回に行った時に、もしかするとそろそろ閉じるかもしれないと聞いていた。その時が来たことを知って寂しくてしようがない。だが、20数年、定休日以外をずっと絵本館で過ごされたオーナーご夫妻、この辺で、少し休んで旅に出たいとのこと。いいですね。僕としては、いつまでも存在して欲しい特別な場所ですが、それは、メランコリックであり、わがままというもの。自由に羽ばたいてもらいたい。

 僕の作品が、あの絵本館に置かれることは、僕にとって本当に嬉しく特別なことです。あそこから、始まった音楽が、あそこへ還る、そんなふうにも思える。あと、2ヶ月足らずではあるけれど、間に合って良かった。

安曇野絵本館
# by kkkr | 2015-05-11 02:35 |

『森を抜け、海をこえ、街から街へと旅をする鳥たちのための絵とサウンドトラック。』

『森を抜け、海をこえ、街から街へと旅をする鳥たちのための絵とサウンドトラック。』_b0060102_2114561.jpg


さて….
この日を待ちわびて、僕の首はキリンのようになりました。


『森を抜け、海をこえ、街から街へと旅をする鳥たちのための絵とサウンドトラック。』
”Flight" Kan Fukuda + Keiji Matsui
SONG X JAZZレーベルより4月29日発売です。
予約開始。初回限定250、Kan Fukudaによる直筆イラスト付き。ハイレゾオーディオ24bit/96k wav/ mp3ダウンロードカード付。

Pictures and the sound tracks for birds in the trip
" Flight " Kan Fukuda + Keiji Matsui
29th April 2015 out from SONG X JAZZ

Over sea order > give a message from "CONTACT" on
ECHO AND CLOUD


詳しくは
SONG X JAZZ
ECHO AND CLOUD
まで。


ありがとうございます。
                     松井 敬治













# by kkkr | 2015-04-08 21:00 | 音楽

インタビュー

インタビュー_b0060102_19163813.jpg


今日の午後は、絵本との音楽作品 Flight のライナーノーツ的なものを書いていただくための、インタビューを絵を描いた福田寛さんとともに受けた。一枚一枚の絵や曲を丁寧に見聞きしてくださったことを感じるインタビュー。作り手は右脳的に(この言葉はあまり好きではないが)作った作品についてインタビューされることで振り返り考える。言語化したりされることで自身の作品についてこれまで気がついていなかった想いや新たな魅力を知る事が出来る。時には勇気づけられることも。

今日は、なにより、絵を書いた福田君と、当人同士では話さなかった作品を生み出したときのそれぞれの思いや経験を知ることになった。あらためて彼と絵と音でひとつの作品を創ったことを良かったと思った。

久しぶりに公園を歩いたら、桜が咲き始めていた。
# by kkkr | 2015-03-26 19:20 | 音楽