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ピアノにまつわる、素敵な出来事。

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T・E・カーハートの『パリ左岸のピアノ工房』 という本を読んだのは、随分前になる。パリにすむアメリカ人の著者が、長年離れていたピアノのある生活を再び始める。あるピアノ工房との出会いから、ピアノを愛する人々、音楽を愛する人々との触れ合いを描くエッセイ的物語。

 この本に出会ってから、本物のピアノに再び向かいたいと思い始めた。実家に帰ると、飾り台と化したピアノを掘り起こしては、ポロポロと弾いていた。ある日、母に、うちに持っていこうかなと言うと、少し悲しそうな顔をした。母は、もちろん弾いてもいない。ただ、たまに帰ってきた僕が、少し弾くだけなのだが...。

 それから、中古のピアノを探し始めた。ピアノ屋さんにも足を運び、毎日のようにオークションもチェックした。ピアノってどれも同じように思えるけれどやはり、実際に触ってみないと解らない。弾いてみて、うっとりするような感覚を得られるかどうかが重要。楽器との出会いは、いつも恋に落ちるような感じなのだ。ピアノセンターと呼ばれるような場所では、何十台ものピアノとお見合いをしたが、出会えなかった。たまたまピアノ屋を見つけると、かならずチェックした。オークションでも、これは?と思うものに出会ったら、見に行かせてもらえるかを質問し、何台かのピアノを弾かせてもらった。

 ある日、オークションで、見つけたピアノは、他のと少し違っていた。名前はJohn Broadwood &Sons。予感めいたものを感じながら、連絡をとってみたところ、オークションに出品したご本人Nさんは、いらっしゃらないけれど、ご両親がピアノの見学にご対応していただけるとのこと。朝から、他の一台を見に行ったあと、午後にお邪魔した。お父様が、大通りまで自転車で迎えに来てくださり、案内されたお家は、少々古いのだけれど素敵な雰囲気のある大きすぎず、小さすぎず、上品な佇まいのお家だった。庭から、春の柔らかい陽かりが差し込むリビングの隅に置かれたそのピアノを見て、胸がキュンとした。

 ピアノの蓋をあけて弾いてみたら、カタカタと言って音が出なかった。中を覗いてみたら、ミュートのための機構が外れていた。あるべき場所に部品を納めたら、息を吹き返したようにポロンポロンと微笑むように鳴った。お母様が、ピアノから少し距離を置いたところから、少し寂しげに立っておられて、「このピアノは、娘がまだ小さい頃に買ったんです」と。きっと、娘さんの成長と共に、ずっとこのお家でこのピアノは一緒に時間を共有して来たのだろうと思った。その時、僕がピアノを持って行くと言ったときの母の表情の意味が少し解ったような気がした。もし、このピアノがうちに来たら、その歴史も含めて愛してあげようと思った。

 その夜、ご本人からメールが。「両親が、是非、松井さんに使ってもらいなさいと言っています。オークションを取り下げるので、オークション開始価格でよければ、どうぞ...」というような 内容。信じられない。そんなことは初めて。もっと高く売れるかもしれないのに....。深い感謝と、なにかご縁を感じながら、御好意に甘えることにした。

 そして、そして、ピアノ配送の手配、お支払いなど、やりとりをする中で自己紹介を。
「 音楽をやっていまして、 the primrose というバンドもやっています。」
というメールに帰ってきたメール、
「私、7年前に、友人に連れられてライブに行ったことがあります.....」
.........驚きとともに、なにかマジックが起こったことを確信した。

 その後、さらに驚いたことに、彼女を僕のライブに連れて行ったその友人とは、 wello air という曲で歌をお願いしたMさんであり、また、僕の一番信頼するエンジニアYさん、とも知り合いであることが判明。驚きの連続。
これは、偶然なのだろうか。

 そんな、素敵な驚きの中、ピアノは、千葉のピアノ工房ピアピットに。1ヶ月半の丁寧なメンテナンスhttp://www.piapit.com/syuri02/jhonb/newpage1.htmを経て先日、うちへとやって来た。その日以来、一日の1/3は、ピアノの前にいるような気がする。うっとりし過ぎて廃人になりそう。

P.S

『パリ左岸のピアノ工房』の作家カーハートに、Nさんに、Nさんのご両親に感謝を。



*John Broadwood &Sonsは、初めてピアノにサスティーンペダル(音を長く響かせるためのペダル)を開発し、 ベートーベンが好んで使ったイギリスのピアノメーカー。
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by kkkr | 2009-06-10 04:23 | 日常の中の特別
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